前野めり個展「too day」全館1/12-1/23
前野めり個展
企画展:全館
会期:2024年1月12日(金)- 1月23日(火)
時間:平日15:00-20:00 土日祝13:00-20:00 水木休み
最終日19:00まで
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「too day」
とにかく1日が長く、こんな日々をいつまで繰り返すのだろうかと思う。
1日が1日すぎる、毎日が1日すぎる。
いつでも終われるくらいには今生に悔いもなく
むしろここからは色んなものを見送る日々が待っている事に
1日の長さへのフラストレーションが溜まっている。
色んな人がいなくなった。
とにかく観念的なものではないリアルな死に触れた2023年。
祖父が2023年10月末に逝き、年を越して今年の1月頭に祖母が逝った。
96歳と91歳の大往生である。
そんなにも長い年月日々を重ね、越えてきた事、少しおそろしさすら感じる。
そこで、祖母につけられた戒名が見事であった。
いつか遠くに逝ってしまうが、1日1日を正しくいき、祈り過ごしていくことで、良き道に進んでいく、というような意味が込められた名であった。
個展のタイトルはこの名付けよりも前に決まっていたため、より腑に落ちる思いがした。
祖母はなかなか手強い人間で、生前、家族の頭を悩ます存在であったが、びっくりするくらい毎日同じ日々を繰り返し過ごしていた。
朝、お経を唱え、供物のご飯と水を変える、毎食家族のご飯を作り、家事洗濯をする。
趣味などはなかったように思う。
これは常人にできることではないと今更ながら思う。
祖母は金にならないものを嫌うので、家族が絵を描く事に大反対し続けていた人間であり、皆、それに従っていた。
しかし、私が勉強が苦手であると知ると、もはや私には何も期待せず放置であった。
自分自身はそれで家族内では楽に生きられた方だと思うが、なんとか進学はせねばと、美術系の大学になんとか入学したのである。
才能などなかったし、何より勉強から逃げての進学だったので目標も指針もなく、卒業後は表現の世界からは遠ざかっていくのであるが、年を重ね、今の表現方法であるフェルトに黒糸の刺繍というスタイルに不意にたどり着いてしまった。
そしてついには今年の1月で制作活動10年目を迎えるまで続いてしまった。
奇しくも、祖母の唯一の優しい記憶として
「刺繍をしてくれた」
というものがある。鮮明に覚えている。
私はこの刺繍を始めてから、毎日を針と糸で布にひたすら縫い付けている。
日記のような、ただ、私はこの日を生き、ここにいるという事を自分で確かめるためだけに。
同じようで同じではない1日を、私はいつまで縫い留めることができるのだろうか。
いつかはわからないが、きっと心と体がこの世からいなくなるまでなのだろう。
それまでは、ただただ1日を越えていこうと思う。
前野めり
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黒糸の刺繍糸を一本取りして、白地のフェルトに刺繍。
主に下書きをせずフリーハンドで刺繍するスタイルで制作。
略歴・展示歴・賞歴
学歴 2004 京都精華大学 テキスタイル専攻 卒業
展示歴 2018 「TIS公募展」 ギャラリー5610 (外苑前)
「個展」 GALLERY DAZZLE (外苑前)
2021 「六甲ミーツ・アート芸術散歩2021」 招待作家として参加(神戸・六甲山)
「個展」 フリュウギャラリー(千駄木)
賞歴 2018 「TIS公募」入選
2020 「UNKNOWN/ASIA」
審査員賞「高見澤清隆」賞 受賞
スポンサー賞「六甲ミーツ・アート」賞 受賞
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